Interview, text & photo
Hong Ae Sun


協力しないと仕方ないよね、ぐらいのレベルだったと思いますが、若い時より今の方が協力的になったかな(笑)。大人になったというか(笑)。
育児を私任せにする、ということはありませんでしたが、大変なときに「無理をしてがんばる」というのは、いつも私の役割だったかなぁ。あと、お互いにフルタイムで働いているのに、家事は9.8:0.2くらいの割合で私がやっているのって、どういう意味があるのかなぁと思うことは多々あります(笑)。

やっぱり、子どもが病気したときです。具合が悪いときにそばにいてあげられないのが一番つらかったです。
上の子は超がつくくらいの健康優良児で保育園もほぼ「皆勤賞」だったんですが、下の子はよく病気をしていたので大変でした。子どもが病気をしたからと、そのたびに店を休むわけにはいかないし……。
保育園の先生も私のそんな事情を知っているので、保育園に連れていったあと熱が出たときも、すぐに迎えに行けないことをわかってくれて、お店のランチタイムが終わるまで保健室で寝かせてくれて、電話する時間を配慮してくれたり。本当に助けられました。
保育園のときだけじゃなくて、小学校に入ってからも病気はありました。たとえばインフルエンザだと、インフルエンザそのものにも抗インフルエンザウィルス剤(タミフル、リレンザなど)にも異常行動の恐れがあって、家に一人にしないでください、と言われますよね。でも、仕事にも行かないといけないので、夫が休めるなら休んでもらったり、上の子に早く帰ってきてもらったりしていました。

インフルエンザじゃなければ、年中くらいから病気の時一人で寝かせてたりもしました。それはやっぱり胸が痛みましたね。でも、もしかすると子どもは覚えてないのかな?と思いました。
たとえば、保育園の卒園や小学校の卒業のときに書く手紙で、親の方は、「具合悪い時にそばにいてあげられなくてごめんね、大きく育ってくれてありがとう」とか書くんですが、子どもは全然そんなこと覚えてなくて、「こういうときに、こういうことしてくれてありがとう」って感じで書くんですよ。親ができなかったことじゃなくて、できたことを覚えてくれてる。だから、「あ、いいんだ」って思いました。もちろん、さみしいことが多すぎたらよくないとは思うけど、その分一緒にいるときに愛情たくさんかけたり話を聞いたりできたらいいのかなぁと。それで、救われたかなぁ。



やっぱり、一番大変な時期の一番大切な子育てを、保育園にかなり手伝ってもらった、というのが大きかったですね。なので、あまり「大変だった」という思いはないです。
通わせていた保育園の先生方には、本当にお世話になりました。「子育ては“個育て”ではなく“共育て”で、その片方を保育園の先生方が引き受けてくださった」というイメージ。特に上の子のときは、私自身何もわからなかったので、先生方にたくさん教えてもらったし、保育園に行っていたからわかったこともたくさんありました。先生にたくさん怒られたし(笑)。自分の子どもの存在を大切に考えてくれる人がいるって、とても心強かったです。

あと、家事は子どもが少し大きくなると手伝ってくれるようになるので、これもまた助かってます。「洗濯物を畳むのは娘の担当」とかって、役割を決めるといいですよ! 早い子だと、年中さんくらいから、少しずつできるようになるんじゃないかな? 工夫次第ですよね。

う〜ん、今、「仕事やっててよかった!」と断言できるような確固たるものはないけど、私がもし一人で子育てをしていたら、今以上にいい育児ができていたとは思えないです。私が仕事して保育園に預けて、保育園の先生にいろいろ教えてもらいながら自分も育ててもらって、という状況が、自分にとっても子どもたちにとっても一番よかったのではと思っています。

中学に上がったら上がったでまた別の悩みがあることがわかったので何とも言えないんですが(笑)、ある程度大きくなると、子どもに人生を返さないといけない、と思うんです。「親ができるのはここまで」という責任は、早めに戻した方がいいのかなぁと、最近特に思ってたり(笑)。
親の役目としてやっておかなきゃいけないことと、子ども自身が自分の人生のために自分でやらないといけないことがあると思うから、「親がやっておかないといけないこと」をなるべくやったら、あとは自分の人生がんばりなさい、と言いたいですね。


実は、私自身、喫茶店を経営する母のもとで育ったので、とっても胸に迫るものがある取材となりました。代わりがきかない自営業。特に、個人でお店をやっていると、お店の信用問題にかかわるので、事情があっても簡単に休むわけにはいかない。子どもが苦しそうにしているときも、仕事を優先させないといけないことも、数多くあったのだと思います。
でも、母を見ていても思うのは、長年、自分の「城」を切り盛りしてきた人は、本当に強い。苦しい場面を突破できる力、そして、どんな状況でも楽しんで過ごす力を持っているように思います。
自営業で、大きなことから小さなことまで数々の苦労を乗り越えてきた朴さん。下の子が小学校を卒業し、子どもたちに対して「世話面」での手が離れた分、「進路面」での新たな悩みが尽きませんが、自分の城を守り、その力で家族を守ってきた朴さんの姿をずっと見てきた子どもたちは、きっと強い力を持ってしっかりと自分の人生を歩いていくのではないかな、と感じました。
そして、「子どもの人生を子どもに返す」という言葉、現在子育て中の私に、グッとくるものがありました。何のために子育てするのか、それは、自立させるためだと、私は思っているのですが、子どもとマンツーマンで向き合っていると、どうしても距離が近づきすぎて、自己同一視しがちになってしまいます。朴さんのこの言葉をいつも胸に刻み、子どもが旅立つその日を見据えて、子どものこと、そして自分のことを、がんばっていこうと思いました。



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