ロスジェネ男子←→女子の往復書簡【25通目】②過去と適切な距離を置く方法が必要です。

画像_02ロスジェネ男子ライター・大宮冬洋(1976年生まれ)と、
ロスジェネ女子エディター・洪愛舜(1977年生まれ)、
ふたりの「ロスジェネど真ん中世代」が試みる
インターネット往復書簡。
突然ですが、「断捨離」は、お得意ですか……??

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洪愛舜さま

こんにちは。大宮です。
いただいたメールを共感しながら興味深く拝読しました。

>「物たち」にまつわるストーリーが、過去が、襲ってくる。

誰しも体験することだと感じます。
だからこそ、過去と適切な距離を置く方法が必要です。
引越はいい機会ですよね。
いろんな思い出のある場所を離れたり物を処分しても過去を捨てることはできません。
でも、場所や物が持つ力からは解き放たれて、過去と「ほどよい距離」を保てる気がします。

僕は20代半ばから30代半ばまで2年に一度ぐらいのペースで引っ越しを繰り返しました。
引越好きなわけではありません。新卒入社した会社を辞めて実家に逃げ帰ってまた独立したり、同棲して結婚して離婚して再婚したり、といったことが原因です。
引越貧乏になったのは事実ですが、引っ越すたびに物(と人間関係)を整理できたという利点はありました。

4年前から住んでいる愛知の自宅には、「思い出の品」はほとんどありません。
愛知に来る前からの物は、手紙類と書籍ぐらいです。
手紙の保管スペースと本棚は拡張する予定はないので、年賀状が来たり本を買ったりするたびに入れ替え戦が行われます。
この原則は洋服や電子機器類、家具にも適用されます。
おかげで我が家で増えていくのはもらいものの蒸留酒ぐらいです。

しかし、そんな僕のすっきりライフにも大きな問題があります。
生れてから大学を卒業するまでの様々な物が東京の狭い実家の押し入れにしまってある問題です。
おそらくダンボールで数箱分はあるのではないでしょうか。
盆暮れで実家の掃除に行く際にすべて処分したいのですが、母親が寂しがって大反対するのは目に見えています。
洪さんも「子どものおもちゃは手放せない」と書いてありましたね。
母が子を思う気持ち、僕にはよくわかりませんが、すごくありがたくてちょっとうざったいです。

話は変わります。
メルマガ「冬洋漬」へのご登録をありがとうございます。
無料ということもあり、半年間で800人超の方に登録してもらいました。
何のためのメルマガ? 仕事につながるの?」
と仕事仲間に聞かれることがあります。正直言って僕にもよくわかりませんよ
でも、インタビュー取材先として名乗り出てくれる人もいて、読者との距離が縮まっていると感じています。

僕はいま、この「往復書簡」も含めてネット媒体での連載が仕事の大半を占めています。
書籍や雑誌などの紙媒体の仕事に比べると、ネットは読者との距離が良くも悪くも近いなと感じています。
どんな世代の人にどれだけ読まれたのかを筆者自身が解析できる媒体もありますし、コメント欄などで感想を書いてもらえる場合もあります。
メルマガ「冬洋漬」の場合は、月に2本ぐらいのペースで発信をしているのですが、そのたびに数人の方から「返信」をもらっています。長文で面白い感想や意見を書いてくれる人も多く、読みながら次のコラムのネタが浮かぶことも少なくありません。

しっかりと読んでくれる人が確実にいるという実感は、執筆をする姿勢にも微妙な影響を与えています。
手を抜けなくなるというか、率直かつ丁寧な文章を書かなければならないという気持ちになるのです。
先日の「エロ欲求」の話は、かなり恥ずかしい部類に入るネタですよね。
でも、「ちゃんと読んでくれる人がいるのだから勇気と誠意を振り絞って書かねばならない」と思いました。
洪さんのように女性のモテ願望につなげて感想を聞かせてくれたりすると、やる気が高まってしまいます。

過去や物との距離は広げて、読者との距離は縮めているこの頃です。
ではまた。

大宮冬洋
2016/09/10 12:42

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★次のメールは10月5日(水)に更新します★

<大宮冬洋 プロフィール>

1976年埼玉県所沢市生まれ、東京都東村山市育ち。一橋大学法学部卒。新卒入社のユニクロをわずか1年で退社し、編集プロダクションを経て2002年よりフリーライターに。 高校(武蔵境)・予備校(吉祥寺)・大学(国立)を中央線沿線で過ごし、独立後の通算8年間は中央線臭が最も濃いといわれる西荻窪で一人暮らし。新旧の個人商店が集まる小さな町に居心地の良さを感じるようになる。
2012年、再婚を機に愛知県蒲郡市に移住。現在は「蒲郡の中央線化(もしくは鎌倉化)」を模索している。
月の半分ほどは門前仲町に滞在し、東京原住民カルチャーを体験中。

Yahoo!ニュース個人にて、「ポスト中年の主張」を配信中。
「キャリア女子ラブストーリー」(日経電子版「WOMAN SMART」)、「ニッポン独身くん図鑑」(『婚活のミカタ』)、「晩婚さんいらっしゃい!」(東洋経済オンライン)、 「『仕事恋愛』の理論と実践」(日経BPネット)などのweb連載のほか、雑誌連載も。

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著書に『30代未婚男』『ダブルキャリア』(ともに共著、NHK出版生活人新書)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵〈ストーリー〉』(ぱる出版) がある。最新刊は『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ぱる出版)。
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2016年にリニューアルした公式ホームページを毎日更新。
メールマガジン「冬洋漬」も発行中、登録はこちらから。

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<洪愛舜 プロフィール>

1977年大阪府堺市生まれ。
立命館大学理工学部卒業後、出版社勤務などを経てフリーランスのライター・編集者に。編集プロダクション「econ(エコン)」主宰。
著書『もやもやガール卒業白書』(MMR)がある。
『econ-mag』編集長。
『目黒駅前新聞』編集長。
5歳児&3歳児を子育て中。
ブログ『目黒より、econがお届けします』を不定期更新。