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大宮冬洋 omiya toyo
1976年埼玉県生まれ。フリーライター。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリング(ユニクロ)に就職するがわずか1年で退職。編集プロダクションを経て、2002年よりフリー。雑誌、web、書籍などで活躍する。著書に『30代未婚男』『ダブルキャリア』(ともに共著、NHK出版生活人新書)、『バブルの遺言』(廣済堂出版) がある。最新刊は、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵〈ストーリー〉』(ぱる出版)。


BPnetビズカレッジにて『「ロス女」vs「ボク様」50番勝負』を好評連載中。
ブログ『実験くんの食生活』を毎日更新。
2011年9月より、毎月1回主催イベント『スナック大宮』を開催。2012年の開催予定は1月18日、2月15日、3月21日、4月18日。

洪愛舜 Hong Ae Sun
1977年大阪府堺市生まれ。
立命館大学理工学部卒業後、出版社勤務などを経てフリーランスのライター・編集者に。編集プロダクション「econ(エコン)」主宰。
著書『もやもやガール卒業白書』(MMR)がある。
『econ-mag』編集長。





     
 

洪愛舜さま

こんにちは。大宮です。
返信遅れてしまってごめんなさい。

「悩む」と「すっきり」、休業中と営業中、呆けると張り詰める、オフとオン。
表裏一体なのでしょうね。

確かに、僕は1年ほど前に半ば外圧によって「営業中」に戻りました。
今は無我夢中で働いている最中です。
迷いはほとんどなく、少しぐらい嫌なことがあっても立ち止まっている暇もなく、ガヤガヤと動いているうちに忘れてしまい、とにかくアウトプットを出し続けている状態です。
このような生活は、体力的には多少辛くても、精神的&経済的には比較的良好になりますよね。実績を積みつつお金が入るんですから。

しかし、先輩ライターによると、「5年周期で立ち止まるときがやって来る」ものなのだそうです。
周期は人それぞれだと思いますが、仕事や人間関係に対する積極性は景気の波のように上下するのでしょう。
ということは、僕も数年後にはまたしても半分引きこもりの状態に戻ってしまうのですね。

怖いようでいて楽しみでもあります。
なぜなら、「悩む」からこそ「すっきり」することが体験的になんとなくわかってきたからです。

悩むというのは、現状に問題意識を持っているからですよね。
自分がいったい何に悩んでいるのかもわからず、だけども目の前の仕事に身が入らなくて、そんな自分に嫌気がさして、人に会うのもなんだか億劫になる…。
完全に引きこもりの傾向ですよね。

夢中で働いた経験すらないままに「適職」を求めて悩むのはどうかと思いますが、真剣に仕事に向き合った結果、どこかでスランプにぶち当たるのはむしろ良いことのように感じています。

「営業中」でもインプットはできますし、テンションが上がっているので情報や知識の吸収効率も高いですよね。
でも、もっと深い意味でのインプットは、「休業中」にしかできないような気がします。

それは職業人としての味のようなものです。
自分の仕事に関して、何を大事にして何にはこだわらないのか、どんなスタンスで仕上げていくのか。己の得意技は何なのか。
「職業観」と言い換えられるかもしれませんね。

僕の自己弁護まじりの直感では、苦悩や休業の経験がない職業人にはこの「味」がありません。
すごく優秀で人柄が良くても、どこか薄っぺらで頼りない気がしてしまいます。
表面上付き合うのはいいけれど、最後までは信用し切れない。
この感覚、洪さんならわかりますよね?

先日、数年ぶりに友人のカメラマンに会いました。
彼は僕と同じ時期に出版業界に入ったのでキャリアは10年以上になります。
ただ、途中で生死に関わるような奇病を患って休業を余儀なくされ、しばらくは仕事をできなかったそうです。
そんな彼が撮った写真を久しぶりに見たら、正直言って以前の作品が思い出せないほどの素晴らしい出来栄えでした。
明るくて洗練されていて、しかも強さと甘みを感じる写真なのです。
僕はすぐに「ああ、一緒に仕事がしたい!」と思いました。友人だからではなく、カメラマンとして魅力的だからです。味わいのある美しい写真をキッチリ撮ってくれると確信できます。

従来エネルギッシュな洪さんの大復活も今から目に見えるようです。
そのためにも今は大いに休業してくださいね。

 

 

 



大宮冬洋

2012/01/10 19:18

 

 
     

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