ロスジェネ男子←→女子の往復書簡【24通目】②仕事の目的って、何でしょう?

ouhuku_02ロスジェネ男子ライター・大宮冬洋(1976年生まれ)と、
ロスジェネ女子エディター・洪愛舜(1977年生まれ)、
ふたりの「ロスジェネど真ん中世代」が試みる
インターネット往復書簡。
大宮氏からの返信は……

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洪愛舜さま

こんにちは。大宮です。
メールをいただいてから時間が経ってしまいました。
ごめんなさい。
4年前に工場勤務の妻と結婚して以来、ほぼカレンダー通り(隔週で土曜日も出勤)で働くようになっています。
というわけで、ゴールデンウイークはお休みをいただきました。
国内はどこも混んでいるだろうから北京に脱出、したのです。
しかし!
5月1日と2日は中国の休み(メーデー?)とも重なってしまったようで、各省から押し寄せる「国内」観光客の波に飲み込まれたのでした。

さて、本題。
お仕事再開における文章を拝見しました。
「焦らないこと」と「でも計画は立てること」はいいですね。
前者は特に共感します。
僕も毎晩布団の中で「この先、大丈夫なのかな。ライターとしての需要がなくなったらどうしよう。何か新しいことをやらなくちゃいけないかな」と不安が募ったりするからです。

でも、焦燥に駆られて夜中に何かをしてもろくなことがありませんよね。

僕の場合は、寝る前に明日やるべきこと(TODOリスト)をメモ帳に書き出しておき、布団の中でモヤモヤしたら「あの項目を一生懸命に取り組むだけでいい。明日はそれしかがんばりようがない。目の前の仕事をきっちりやることが最大の営業活動だ」と自分に言い聞かせています。
すると、気持ちが少し落ち着いて、安眠できたりするのです。

ちなみに今日のリストは、この文章を含めて原稿書きが2つ。
あとは取材アポを入れたり、耳鼻科にアレルギー性鼻炎の薬をもらいに行ったり(健康管理も大事ですよね!)、夕食の煮魚を作ったりする予定です。

「計画を立てること」に関しては、僕がいつも洪さんを尊敬しているポイントです。
本当の意味での計画(企画)がたくさんあるという人は意外と少ないと僕は感じています。

以前、先輩ライターから「企画案を常に10個ぐらいは温めておいたほうがいい。編集者から『何かありませんか』と声をかけられたとき、すぐに実現できるようにしておけ」とアドバイスをしてもらったことがあります。

僕は常に1、2個しか企画案がありません。
その1、2個に関しては仲間にも声をかけて自主的に動いているのですが、他の仕事はかなり受動的なのです。
お金になってもならなくてもいいので(できれば少しでもお金になったら助かるけど)、誰かに声をかけてもらうのを待っています。

焦らず待つことも大事なのです。
芸人や俳優と同じような立場だ、と思って自分を納得させています。

振り返ってみれば、この「往復書簡」も洪さんに提案してもらった企画ですよね。
不特定多数の人向けに原稿を書くよりも、読み手が見えているメールを書くことのほうが好きで得意だと思っている僕にはぴったりです。
内容は、同世代の親しい異性の書き手である洪さんと暮らし方や働き方に関する意見交換。望むところです。
記事は洪さんが丁寧に編集&デザインしてくれて、おそらく同世代の女性を中心とする方々にじっくり読んでもらっていて、ギャラもいただいています。
これ以上にない企画だと言えるでしょう。

逆に言えば、「もっといい企画だったらオレの才能が生かせるのに」などという言い訳はできない厳しい場です。
だからこそ、読んでくれる人の目線も意識しながら、できるだけ率直に(なりすぎて感じ悪くなることも過去にありましたね。反省)わかりやすく書こうと心がけています。
読者の評価とは異なるかもしれませんが、自己評価では素直で良い文章です。
さらに多くの人に読んでもらいたい、という気持ちになります。
今回の往復書簡が完成したら、洪さんに誉めてもらった新ホームページと無料メルマガで宣伝しますね。

仕事の目的は、「社会貢献」「自己実現」「金稼ぎ」の3つだと僕は思っています。
3つを均等にかなえることは無理でも、少しずつでもそれぞれを同時にかなえるべきですよね。

真逆の3つを挙げるとわかりやすいでしょう。
詐欺まがいの行為で誰かを不幸に導く、自分の力を生かせないどころかストレスを溜めこむ、やればやるほど赤字になるし将来性もない――。
こんなことでは「仕事」とは言えません。
でも、気を抜くと、このような「仕事もどき」に身を委ねる誘惑に負けてしまいそうになります。

家事を含むあらゆる仕事には緊張感が必要です。
緊張を伴うからこそ美しいものを作り出せるし、結果的に満足感と達成感を得られるのだと思います。

仕事の前は気分が重いし、仕事中は大変だし、仕事の後はヘトヘトです。でも、なぜか気持ちがいい。夜にはお酒をおいしく飲めます。明日もがんばろうと思えます。

誰かのために少しは役に立てた、自分のささやかな能力を精一杯に発揮できた、報酬もそれなりにもらえた――。
この実感が僕たち社会人の背骨を支えているのかもしれません。

風薫る5月。1年で一番過ごしやすい季節ですね。
お互いに健康第一で働きましょう!

5月6日 愛知県蒲郡市の自宅にて
大宮冬洋
2016/05/06 9:49

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<大宮冬洋 プロフィール>

1976年埼玉県所沢市生まれ、東京都東村山市育ち。一橋大学法学部卒。新卒入社のユニクロをわずか1年で退社し、編集プロダクションを経て2002年よりフリーライターに。 高校(武蔵境)・予備校(吉祥寺)・大学(国立)を中央線沿線で過ごし、独立後の通算8年間は中央線臭が最も濃いといわれる西荻窪で一人暮らし。新旧の個人商店が集まる小さな町に居心地の良さを感じるようになる。
2012年、再婚を機に愛知県蒲郡市に移住。現在は「蒲郡の中央線化(もしくは鎌倉化)」を模索している。
月の半分ほどは門前仲町に滞在し、東京原住民カルチャーを体験中。

著書に『30代未婚男』『ダブルキャリア』(ともに共著、NHK出版生活人新書)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵〈ストーリー〉』(ぱる出版) がある。最新刊は『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ぱる出版)。uniqroYahoo!ニュース個人にて、「ポスト中年の主張」を配信中。
他にも、「ニッポン独身くん図鑑」「お見合いおじさんが来た!」(共に『婚活のミカタ』)、「晩婚さんいらっしゃい!」(東洋経済オンライン)、 「『仕事恋愛』の理論と実践」(日経BPネット)などのweb連載のほか、雑誌連載も。
omiya自ら主催するイベント「スナック大宮」を東京・西荻もしくは愛知・蒲郡にて月に1回のペースで不定期開催中。
2016年より全国巡業も始め、次回は5月21日(土)に大阪で開催。要予約。詳しくはこちら

2016年にリニューアルした公式ホームページを毎日更新。
メールマガジン「冬洋漬」も発行中、登録はこちらから。

<洪愛舜 プロフィール>

1977年大阪府堺市生まれ。
立命館大学理工学部卒業後、出版社勤務などを経てフリーランスのライター・編集者に。編集プロダクション「econ(エコン)」主宰。
著書『もやもやガール卒業白書』(MMR)がある。
『econ-mag』編集長。
『目黒駅前新聞』編集長。
4歳児&2歳児を子育て中。
ブログ『目黒より、econがお届けします』を不定期更新。