洪愛舜さま

こんにちは。大宮です。
洪さんのメールを受信して半日も経たずに返信を書き始めています。
気の合う洪さん宛だから筆が進むという理由もあるのですが、もう一つのわかりやすい理由は「暇だから」です。

『東京ファイティングキッズ』を読むと、著者は二人ともすごく忙しそうですよね。
以前、ビジネス誌か何かで「忙しい忙しいという人は本当はそれほど忙しくない。 時間の使い方が下手なだけだ」なんていう格言めいた文章が載っていました。
あの二人はどうなんでしょうかね。
大学教授と会社社長という本業があるのだから、実際に多忙を極めているのかもしれません。

僕はリアルに暇です。
例えば今週の予定は取材が一件あるだけ（さきほど終わりました）。
後は、家事をしたり本を読んだり映画を観たりゴロゴロしたりして過ごしています。
週末は妻と一緒に群馬県の山奥で畑作業です。
なんか、定年後のオヤジみたいな生活ですね……。

言い訳をさせてもらうと、３年ほど前まではそれなりに忙しかったんですよ。
月に２０本ぐらいは原稿を書いていました。
内容は、デジカメ入門本、芸能人インタビュー、企業の暴露記事、などなど。
つまり、発注してもらえた仕事はほぼ何でも引き受けていました。

５年間ぐらいひたすら書き続けて、あるときちょっと欲が出てきました。
「本当に興味を持てる仕事だけをやりたい」という気持ちが抑えられなくなって、雑誌の特集制作などに参加する職人的な仕事をやめて、自分なりの文章を書ける連載エッセイなどに絞ることにしました。
いわゆる「自我の目覚め」というやつですね。

といっても、「俺はこれが書きたい！」という強烈なものはないので（「これはやりたくないな…」はありますけどね。株式情報記事とか）、自主的に取材や執筆を重ねて自費出版でも世に問う、なんていう姿勢はありません。
洪さんのような奇特な人が声をかけてくれる仕事で食いつなぎながら、膨大な暇時間を持て余しつつ暮らしています。

ただ、今さら「自分探し」をしたいとは思いません。体力も根性も実行力もない僕は、やれる仕事はライターしかないと痛いほど実感しているからです。
卑下しているわけではありませんよ。
「課長島耕作みたいなビジネスマン」とか「ワールドカップに出場するサッカー選手」になって世界中で大活躍する妄想を楽しんだりすることはありますが、実際にはやれないしやりたくない。計数が嫌いなビジネスマンや走るのが嫌いなサッカー選手はいませんからね。

だから、今ではすっかりグローバル企業になったファーストリテイリングを辞めたことも後悔はしてません。入社したことには少し後悔してますけどね。
あまりに多くの人に迷惑をかけたので。
僕は、結論ありきでない文章を書いて、誰かに読んでもらうのが好きなのです。
主体的にやりたいことは、おしゃべりも含めた言語コミュニケーションしかないのですね。他には、納豆ご飯を食べることぐらいかな…。
ということで、「往復書簡」という仕事は願ったりかなったりですよ。有難い企画だな。

言葉を選びながらこうして少しずつ書いていると、普段はつかみどころのない「自分」が少しだけはっきり見えてくる気がします。
「俺はこんなことに悩んでいたんだ」「ああいう人が大好きなの？」なんてね。
そのとき、ちょっとした自己陶酔（オレ上手！）と同時に、救済のようなもの（オレ大丈夫！）を感じます。大げさかな？

で、僕の文章を読んでいる人は、僕とおしゃべりをしているような気分になってくれると嬉しいです。
専門知識のない僕は何かを教えたりすることはできないし、かといって芸能人や商品をよく見せる広告記事も不得意です。
でも、「おしゃべり」だけは得意ですよ。気が合う人だけを相手に選んでいるので、当たり前といえば当たり前ですが……。

洪さんをはじめ、この文章をここまで飽きずに読んでくれている人は、「金にならない情報は必要ない」「有名人の言葉しか聞きたくない」というタイプではないのは明らかなので、 すでに僕と気が合うことになりますね。
いやー、書きやすい。いくらでも書けちゃうよ。

と言いつつ、今日はこれぐらいにしておきます。そろそろ帰宅して夕食を作らなければならないので。
洪さんのメールにまったく関係のない内容になってしまいましたが、会話だとよくこういうことってありませんか？　相手の話が面白いからこそ、それとは全然違うことを思いついて、今すぐ相手に伝えたくなる。女性同士のおしゃべりに多く見られる傾向だと思っていましたけど、
僕もその一人なのだと書きながら自己発見しました。

ではまた。

大宮冬洋

2010年6月30日 19:04

追伸：犬問題は継続中です。犬小屋を設置したのに犬が入ってくれません…。まあ、少しずつ模索するしかないですね。
ブログは近々再開する予定です。ご心配いただきありがとうございます。