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大宮冬洋 omiya toyo
1976年埼玉県生まれ。フリーライター。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリング(ユニクロ)に就職するがわずか1年で退職。編集プロダクションを経て、2002年よりフリー。雑誌、web、書籍などで活躍する。著書に『30代未婚男』『ダブルキャリア』(ともに共著、NHK出版生活人新書) がある。最新刊は、『バブルの遺言』(廣済堂出版)。
日経ビジネスオンラインにて『ボク様卒業への道 ロスジェネ既婚男のつぶやき』を好評連載中。
ブログ『実験くんの食生活』を毎日更新中。


洪愛舜 Hong Ae Sun
1977年大阪府堺市生まれ。
立命館大学理工学部卒業後、出版社勤務などを経てフリーランスのライター・編集者に。編集プロダクション「econ(エコン)」主宰。
著書『もやもやガール卒業白書』(MMR)がある。
『econ-mag』編集長。


     
 
大宮冬洋様

こんにちは、洪愛舜です。
まず初めに、このメールをお送りするのが大幅に遅れてしまったことを、 心からお詫び申し上げます。
自分から「往復書簡しましょう! 連載で!」と言い出したのにも関わらず、 その1通目をお送りするのにこんなに時間がかかってしまって 本当に申し訳ございません。

先日、大宮さんが読まれていた『東京ファイティングキッズ』、私もいま読んでいます。
ちょうど私が大宮さんに往復書簡をやりませんかとお声がけしたときに 大宮さんがもっとも尊敬する内田樹さんによるこの“往復書簡本”を読まれていたことに不思議なご縁を感じ、 これは私も読むしかないなー! と思って早速入手しました。
そして読んでみると、この文庫を編集されたのが私が大好きでとても尊敬する編集者さんだったことがわかって、それもまた運命めいたご縁を感じ! 興奮してしまいました。
しかし……この本を読んだことが、1通目メールがこんなに遅くなってしまったことの一因となってしまったかもしれません。
私にはこんな風に「あの時代は……」と論理的に語って読者をうんうんと納得させることはできないだろうし、 風景や想いについていろんな作品を引用しながら普遍的に解説することもできないだろうし、 そんな自分がやろうとしているこの連載は、
どこに向かっていけるのか、
読者に何を伝えられるのか、
そんなことを一度考え出してしまったらがんじがらめになってしまって、
ペンを進めることができずにいました。

でも、こうやってやり始める前にいろいろ悩んで動けずにいるというのは、 私がもっともよしとしないことです。
「とりあえず、面白いって自分が思ったから、やってみる。どうなるかは、その後で考える」というのが私の人生において一貫して通してきたスタイルだということを思い出し、あれこれ考えるのはやめて、そしてこの本は一旦閉じて、とりあえずペンを進めてみることにします。

さて、大宮さんのブログ、いつも楽しく拝見しています。
特に大宮さんが現在の新居へと引っ越されてからの日記は本当に面白くて面白くて、 こんなにも赤裸々に今の自分の様子とか感情とか心境とかを表現できる大宮さんは ぜったいにすごい大物だって感じずにはいられません。
(と、こういう書き方をするとふだんは大宮さんのこと「小物」と思っているように聞こえてしまいそうですが、決してそうではなく、大宮さんがご自身でよく「小さい男だ」とか言われるのでそれに対して、ということです……。ほんとですよ!)

大宮さんと初めてお会いしたのは、思えば(というほど前の話でもありませんが)2008年の秋、 私の著書『もやもやガール卒業白書』の出版記念イベントで『もやもやガールVSうだうだ男子』というトークをすべく、担当編集者さんにご紹介いただいたのでしたね。
あの時私は典型的な「もやもやガール」で、大宮さんはこれまた百科事典かウィキペディアに写真ごと掲載されそうなぐらいの「うだうだ男子」でした。
(あのイベントは大宮さんのうだうだっぷりのおかげで成功したと言っても過言ではありません)
そんな私たちが、1年半経った今、お互い結婚してもやもやガールもうだうだ男子も卒業したのかと思うと、少し感慨深いものがあります。
特に大宮さんはあんなにうだうだなことたくさん言ってたのに あれよあれよと言う間に同棲が始まりそれに驚いている間に結婚、と 本当に人生ってこんなにめくるめくものなんだなぁと大変びっくりしました。
こんなにズズズズー!って進んでいく展開に、大宮さんは戸惑ったり怖くなったりしませんか?

変わることって、恐怖心を伴うことだと思います。
「気づかないうちに少しずつ」という変化ならまだついていけるとしても、 「目が覚めたら全然違う世界にいる!」という変化って、 (たとえそれが自分が望んだ変化だとしても)とても怖いことだなと。
臆病さゆえか、私は変わることを恐れています。
結婚してもう1年以上経つのにいつまでも「独身ぶって」しまう自分がいます。
独身の友人と話すときは、いつまでも「独身スタンス」で恋ばなしたいと思ってしまう。
つれあいのことをつい「旦那」じゃなく「彼」と言ってしまう。
いつまでも「しがみついている」のは本当に格好悪いしズルいと自分でわかっているし、 自分は何をそんなに恐れているのだろうって思うけど、 結婚して「あっち側」に行ってしまうことに対しての恐れがつきまとっているように感じるのです。
(すでに「こちらサイド」にいるのにそれを「あちら」と認識している時点でダメダメですが……)
私っていつまでこうなんだろうと本当に自己嫌悪に陥ることも多く、 いつか自然に変わる日が来るのか、それとも何か劇的なことがあって突然変わるのか、 変われる日が来るのか……。

大宮さんのブログを読んでいて、結婚や義両親との同居で自然と変わっていく大宮さんと、あれ、僕こんなに「自然と」変わっちゃっていいのかな、と、変わっていく自分を「受け入れること」に戸惑う大宮さんを感じて、とても興味深く思っています。
今の自分の中にうずまく「変化」に関すること、お話お聞かせいただけたらうれしいです。
お返事お待ちしています。

かしこ

洪愛舜拝

2010年6月23日 9:48

 
     
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