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大宮冬洋 omiya toyo
1976年埼玉県生まれ。フリーライター。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリング(ユニクロ)に就職するがわずか1年で退職。編集プロダクションを経て、2002年よりフリー。雑誌、web、書籍などで活躍する。著書に『30代未婚男』『ダブルキャリア』(ともに共著、NHK出版生活人新書)、『バブルの遺言』(廣済堂出版) がある。最新刊は、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵〈ストーリー〉』(ぱる出版)。


BPnetビズカレッジにて『「ロス女」vs「ボク様」50番勝負』を好評連載中。
ブログ『実験くんの食生活』を毎日更新。

洪愛舜 Hong Ae Sun
1977年大阪府堺市生まれ。
立命館大学理工学部卒業後、出版社勤務などを経てフリーランスのライター・編集者に。編集プロダクション「econ(エコン)」主宰。
著書『もやもやガール卒業白書』(MMR)がある。
『econ-mag』編集長。





     
 

洪愛舜さま

こんにちは。大宮です。
この往復書簡、僕もけっこう楽しんでいますよ。
直観力の優れた洪さんからのメールは、「このタイミングでその話題を振ってくるのか〜」という内容が多いので、
自分の内面と向き合って、適切な言葉を探す必要に迫られます。
それは僕にとって嬉しい作業です。

今年は洪さんにとっても転機の年なのですね。
仕事との関わり方が大きく変わってくる、 たくさんの円を重ねながら過ごしていく、という表現に心惹かれました。
仕事とプライベートをごちゃ混ぜにしながら生活するのが僕たちフリーランサーの基本的なあり方だと思うのですが、小さな子どもがいると話は変わってくるのでしょうね。
ずいぶん昔に子連れ出勤論争みたいなものがありましたが、子どもは完全にプライベートな存在なので、大人の友人とは違って仕事にも関わってもらうわけにはいきませんよね。

子連れ出勤論争の結末がどうなったのかは知りませんが、僕が最近興味があるのは上野千鶴子と内田樹による「おひとりさま」論争です。
近代家族が崩壊したことを前提にして「おひとりさまの老後」の過ごし方を提案する上野に対して、「おひとりさま」で楽しく生きられるのは経済力もコミュニケーション能力も優れた「勝ち組老人」だけで、その他の人々はこぼれ落ちてしまうと内田は反論しています。
近代家族がどんなに不具合であっても、不愉快な弱者をも支えうるシステムとしての意義は失われておらず、代替システムが確立しない限りは安易に「おひとりさま」などを喧伝すべきではない、というのが内田の主張だと思います。

僕はどちらかというと内田の意見に「痛いところを突かれた」と感じました。
僕は今、好きな街で愉快な仲間たちに囲まれて、勝手気ままな一人暮らしをしています。この生活のまま一生を終えてもいいな、と思うこともあります。
でも、人生は何が起こるかわかりません。
「いい人だなあ」と心底思っていた人が、経済環境の変化などによって急に「不機嫌でしみったれたヤツ」になることもありえますよね。僕自身も含めて。
そのとき、家族と同じように我慢して付き合い続けられるでしょうか。
よほど強い絆で結ばれていない限り、なんとなく疎遠になって縁が切れてしまう可能性のほうが高いですよね。

一方で、家族システムも信頼性に欠けつつあると感じています。
もし家族の意義が失われていないのであれば、自殺や孤独死が膨大な数に上る状況を説明できません。先日発表された国勢調査の結果でも、単身世帯が初めて3割を超えました。離婚も珍しくありませんし、高齢化や少子化は進むでしょう。
国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、90年後には日本の総人口は現在の約3分の1にあたる4000万人を割り込みます。
単身世帯はますます増加するでしょう。
家族が崩壊し続けた結果、とも言えますよね。

ではどうすればいいのでしょうか。
大増税をして国や自治体が面倒を見る社会を作るべきなのか、地域社会での助け合いを自助努力で充実させるべきなのか。家族の意義をもう一度見直すのか。それとも、個人主義を極めた先進諸国の民は、地球環境のために滅びるに任せるべきなのか。

答えがまったく見つかりません。
僕個人も快適な一人暮らし生活を手放すつもりは今のところありません。
子育てとか介護とか、面倒くさいことはできれば避けたいし…。

なんだか「滅ぶべきかも」という結論に至りそうなので、このへんでやめておきます。
暑い日が続きますが体調管理に注意してくださいね。

 

 



大宮冬洋

2011年7月5日 14:31

 

 
     

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