HOMEback number > 「ロスジェネ男子←→女子の往復書簡」

ロスジェネ男子ライター・大宮冬洋(1976年生まれ)と、ロスジェネ女子エディター・洪愛舜(1977年生まれ)、ふたりの「ロスジェネど真ん中世代」が試みるインターネット往復書簡。30代前半というものは、多かれ少なかれ、誰しもが人生の転機を迎えるものです。男も女も、仕事でもプライベートでも。第5回目の今回は、それぞれの「転機」について語ります。ぼやいたり悩んだり確かめたりしながら綴る「変化の記録」を、一緒にお楽しみいただければ幸いです。


<profile>
大宮冬洋 omiya toyo
1976年埼玉県生まれ。フリーライター。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリング(ユニクロ)に就職するがわずか1年で退職。編集プロダクションを経て、2002年よりフリー。雑誌、web、書籍などで活躍する。著書に『30代未婚男』『ダブルキャリア』(ともに共著、NHK出版生活人新書)、『バブルの遺言』(廣済堂出版) がある。最新刊は、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵〈ストーリー〉』(ぱる出版)。


BPnetビズカレッジにて『「ロス女」vs「ボク様」50番勝負』を好評連載中。
ブログ『実験くんの食生活』を毎日更新。

洪愛舜 Hong Ae Sun
1977年大阪府堺市生まれ。
立命館大学理工学部卒業後、出版社勤務などを経てフリーランスのライター・編集者に。編集プロダクション「econ(エコン)」主宰。
著書『もやもやガール卒業白書』(MMR)がある。
『econ-mag』編集長。



     
 
大宮冬洋さま

こんにちは! 洪愛舜です。
お元気でいらっしゃいますか。
私は現在も引き続き大阪にて滞在中です。
今年の大阪は梅雨らしい梅雨で、たっぷりと雨が降る日が多いですが、ここ2日ほどは夏が来たような晴天が続いています。暑い……。
東京もこんな感じでしょうか?

さて、5月16日に出産しました。
母となって1ヶ月が過ぎましたが、なんだかまだフワフワとしていて、ときどき全てが幻なのではないか思えたりもするのです。
こんなに可愛い子がこんなにも業の深い私のもとに産まれてくるなんて……と疑ってしまったり……。
世に言う強靭な「母性」なるものが私の中にまだ誕生していないようで、こんなんで大丈夫なのかなぁと不安になったりもしています。
私っていつまでこんな感じなのかなぁ……。
とは言え、「我が子」は想像していたより遥かにかわいく、「ずっと見ていたい」と思わせる不思議な力を持っているようです。
毎日を懸命に生きながら日々すさまじく進化している子と真摯に接することで、私も少しずつ成長してゆけたらと思う次第です。

話は変わって……大宮さんの最新刊『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵<ストーリー>』、拝読いたしました!
読み進めながら思うところ多く、読了後、大宮さんといつものようにルタンかばるぼらかゴールデン街かで飲みながら語らいたい衝動に駆られましたが、そんな自由の利く身ではなくなった自分自身にハッと気づき……。
というわけで、この往復書簡メールを使って感想を語らせていただこうと思います。

最初に感じたのは、まさにこれは大宮さんにとって「渾身の一冊」だなぁ!ということです。
大宮さんがブログに書かれていた通り、大宮さんの「10年間のフリーライター生活の全てを詰め込んだ自信作」だなぁと。
前作『バブルの遺言』や「日経ビジネスオンライン」「日経BPネット」などでのインタビューものは、取材対象と大宮さんとの対話が中心の構成となっていて、それはそれで、「となりで話している二人組の会話を盗み聞き」している感覚で私はとても好きなのですが、本作はその対話を大宮さんが一度すべて飲み込み、これまでの経験と自身の信念を通して導き出された大宮さん流の数々の理論が展開されており、非常に興味深かったです。
一度飲み込んでから吐き出す作業は、きっと、書き上げるまでに苦しい段階もあったんでしょうね。
でも、本作ができあがり、非常にすがすがしい気分になられたのではないでしょうか!?
本当にお疲れさまでした。

そして、本作に登場する12人の「フリーランサー」は、「追い詰められ系」と「自分探し系」とに分けられるのかな、と思いました。
自分自身が壊されるくらい働かざるを得ない状況にある「追い詰められ系」の方は、ぜひすぐにでも逃げ出してほしい! と感じました。
そのために自分の中で会社で生きていく以外の「選択肢」を持っていることが本当に大切ですよね。
そして「自分探し系」の人について……20代のころの私は、「自分のやりたいことがわからない」とか「自分の居場所はここじゃない気がする」とか言う「自分探し系」の人々に対して、「『やりたいこと』とか言う前に、まずできること増やしてください」とか「その仕事だってあなたにやってもらいたくないって思ってるんじゃないですか」とか言って
ザクザクとぶった切ってきたので、少し反省しました……。
こうして真摯に対話すれば、私が気づけずにいた新しい道、新しい方法を知ることができたかもしれません
答えを出して行動するために、その前段階として「悩むこと」が大切なんだと、最近思います。
私は何かあってもあまり悩まずに、その都度、自分にとって都合良く解釈してやりすごす傾向があります。
これは、いい風にとらえると「ポジティブ」なんですが、その時その時でごまかしているだけで、問題を先延ばしにしているだけのことが多く、気づいたときにはもう戻れないところまで来てしまっていることが多々あります。
「自分を探す」くらいの勢いで、時に立ち止って考えたり悩んだりすることも必要なんですよね。

そして、読了後なんとなく引っかかったのが、登場人物の方々を見まわしてみると、皆都会暮らしか都会出身で、大学を出ていて(それも皆さんけっこういい大学?)、何というか「選択肢」が数多くある人ばかりのような気がしたことです。
今、3か月ほど地方で暮らしていて、東京と地方との違いを強く感じます。
地方で生まれて地方で育ち、そしてそこで生きていく人の方が圧倒的に多く、その場合、仕事の選択肢も東京に比べると遥かに狭まります。
そういう場合でも、「セルフサイジング」と「スペシャライジング」できるだろうか?

できるような気もするし、夢物語のような気もします。
大宮さんはどう思われますか?

と、ここまで一方的に語ってしまいました。
(最近ほとんど「家族」としか話していないので、人とのコミュニケーションに飢えているのかもしれません)
今週末、東京に戻ります。
一体どんな生活が待っているのか……恐ろしくもあり楽しみでもあります。

ではでは、また。


洪愛舜

2011年6月24日2:48
 
     


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