プレイヤーとして『Ｔａｋｅ』する立場から、トレーナーとして『Ｇｉｖｅ』する立場にまわってほしいという社長からの提言。安田さんは、すぐには『Ｙｅｓ』の返事を出せませんでした。
「まだ、自分がやりたい、という気持ちがあったんです。ディレクターになるということは、現場を離れるということですから。自分が立ち上げた広報だったので、やりがいもありましたし、もっとこの仕事を極めたいとも思っていました」
　 迷い続ける安田さんの背中を押してくれたのも、社長からの言葉だったのです。
「何度も社長と話し合っていた中で、『由華ちゃんの力を発揮できる場所をもっと広げたい 。会社としてもそれが必要だ 』という言葉をいただいたんです。それでまた、ハッとしました。自分だけで仕事をしているなら、フィールドは自分という範囲だけでしかない。でも、誰かを育てるという仕事をしたら、その人の範囲までが自分のフィールドになるんですよね。
実際のところ、当時自分の中で、これから先どうやってフィールドを広げていけばいいか、考えあぐねている自分もいたんです。そんな私に対して、もっと力を発揮できる場所を与えようとしてくれてるんだと思い、自分の成長について真剣に考えてくださった社長に対して、感謝の気持ちが膨らみました」

　 そうして大きな決断をくだし、ディレクターとしての一歩を踏み出した安田さん。その決心は、『会社』という舞台において主人公であることを卒業し、脇役に徹しようという意味も持っています。それには相当の覚悟が必要だったはず。安田さんが覚悟を決められた要因は、何だったのでしょうか。
「この会社が好きという気持ちもありますが、さらに、会社の企業理念や考え方を広めていきたいと思っていたからです。当社のような会社が増えていけば、もっと楽しく仕事をして、人として大切なことを忘れない人が増えるのかな、と。
今の会社に入って、人としてもすごく変わったと思います。今までの自分は、自分のことで精一杯で、周りは全然見えていませんでした。当時は、そのことにも気付いていなかったかな。でも、今は全てにおいて『感謝の気持ち』を持つことが、一番大切だと思っているんです。仕事ができること、給料がもらえること、一緒に働く仲間がいることなど、全てにおいてです。
人に対する『感謝の気持ち』が、生きていく上で一番大切なことだって気づかせてくれた社長やスタッフの皆さん、そしてこの会社という環境に対して、今はすごく『ありがとう』と思っています。だから会社を一緒に創る立場になって、この会社の理念だったり、考え方だったりを広めていきたいという気持ちが強いんです」