大宮冬洋 oomiya toyo
profile
1976年埼玉県生まれ。フリーライター。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリング(ユニクロ)に就職するがわずか1年で退職。編集プロダクションを経て、2002年よりフリー。雑誌、web、書籍などで活躍する。共著に『30代未婚男』『ダブルキャリア』(共に生活人新書)がある。日経ビジネスオンラインにて『ロスジェネ世代の叫び! ボク様未婚男』を好評連載中。32歳、未婚。
毎日更新の食生活ブログ『実験くんの食生活』

荻野進介さんとの共著書『ダブルキャリア』(生活人新書)。この本の制作を通して、自身の進む道が少し見えるようになる。




「今は雑誌なんかでいろいろと仕事させてもらっているけど、フリーライターとして雑誌の編集さんから便利に使ってもらえるのって35歳ぐらいまでだから、それまでに自分の進むべき道を確立しておかないといけないなって思ってるんです。

フリーとして35歳以降も引き続きやっていくために3つの道があるんですよ。というか、この三つのどれかを選ばないと、諦めるしかない。

一つめは『編プロおやじ』コース。若い人を雇って仕事をたくさんとってきてどんどんまわしていく、というやり方です。二つめは『専門ライター』コース。医療とか流通とか人事とか、何かの分野に特化して、その道ではこの人に聞け、っていう存在になること。最後、三つめは、自分の書き口やキャラクターを売りに書きたいことを書くという、『作家コース』。
ユニクロで『人を使えない』という挫折を体験したから一つめの道はすぐに消えたんですが(笑)」

専門ライターになるか、作家になるか。ビジネスライターとして活動していた大宮さんにとっては、ビジネス関係の専門ライターになってゆくのが王道かもしれませんが、安易にその道を選ぶことができなかったのです。

「社長に取材してビジネスノウハウを伝授してもらったり、ずっとそういうことを書いてはいたんですが、ビジネスノウハウや実用書に対して、自分の中にそれほどの情熱はないかもしれない、と薄々気づいていました。
これはコンプレックスでもあるんですが、自分は根本的に、自分以外のものにあまり興味がないんです。
専門ライターとして確立していくためには、その分野についてオタク的に興味を持ってないといけないんですよね。仕事としてだけじゃなく、常にそのことについて情報収集して、アンテナをはっておかないといけないんですが、自分はそういうオタク体質ではないってことに、気づいていたんです」

自分は「オタク」にはなれない。だから二つめの道は自分の道とは違うのかもしれない……大宮さんの中にあったそんな『予感』を、確定的な事実として決定づける出会いがありました。

「去年、荻野進介さんと一緒に、『ダブルキャリア』という本をつくったんです。この荻野さんという方が、ものすごい一流のビジネスライターで、二つめの道――『専門ライター』として活躍してる方なんですが、なんというか、僕、すごくそっくりなんですよ。
顔というか、雰囲気も似てるし、大学も同じだし、これまでの経歴も似てるし。ちょうど10歳年上なんですが、これが自分の10年後か……と思ったら、こんな風にはとてもなれないな、って思いました」

そんな大宮さんに、ある種『お手本』を示してくれたのが、ずっと一緒に仕事場をシェアしていた先輩ライターの北尾トロさんでした。

「北尾さんとはずっと一緒にいて面白い人だなーとは思っていたんですが、荻野さんとの出会いを通じて、改めて『自分はこんな風になりたいのかもしれない』と思ったんです。
不自然にしかける、というのが好きじゃなくて、自分の生活の中で興味があること企画にして本にする、という人で。例えば古本とか裁判傍聴とかやってらっしゃるんですが、それに対してもっと知識がある人はいくらでもいる。でも、この人が書くから面白いって思わせるものがある人なんです。
まさに3つめの道を歩いている人。そういう自然体なところとか、すごくカッコイイな、面白そうだな、と思って、自分の進む道はこっちかも知れない、こっちに進みたいって思ったんです」

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text by Hong Ae Sun
 
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