大宮冬洋 oomiya toyo
profile
1976年埼玉県生まれ。フリーライター。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリング(ユニクロ)に就職するがわずか1年で退職。編集プロダクションを経て、2002年よりフリー。雑誌、web、書籍などで活躍する。共著に『30代未婚男』『ダブルキャリア』(共に生活人新書)がある。日経ビジネスオンラインにて『ロスジェネ世代の叫び! ボク様未婚男』を好評連載中。32歳、未婚。
毎日更新の食生活ブログ『実験くんの食生活』

地元・西荻の仲間たちとつくるフリーペーパー『西荻丼』。誌面の至るところに、我が街への愛が溢れている。




荻野さんの道を行くか、北尾さんの道を行くか。ふたりの先輩の後ろ姿を見て、北尾さんの方の道を進むことを決めた大宮さん。でも、決心するは易しですが、そんなに簡単に道が開けるわけではありません。

「そうなんですよ。めちゃくちゃ門戸は狭いですよね。奇抜だからいいわけではないし、だからといって世間的に全然関心がないことでもいけないし、何より自分にとって、自然体でないと絶対に続けられない。だから、今はほんと自分自身のキャラクターが大事なんだな、って」

ここで、大宮さん、「あ」と気づきます。

「そうか、だから俺、今は『自分自身』が一番たいせつなのかもしれない……」

なるほど。自分がたいせつ、というのは、ただの自己愛に満ちた偏狭な個人主義ではなく、自分のこれからの道を模索しての答えだったのです。後から気づきましたが。

「僕が歩きたいと思ってる3つめの道というのは、対象物そのものを書くというよりは、その『対象物』と『自分自身』との距離感を書くということなんですよね。ちなみにこれは某大御所ライターの言葉を借りていますが(笑)。
だから、自分がどんなキャラクターで、何を感じるのかを読んだ人に面白いと思ってもらう必要があるんですよね」

では、これからの大宮さん、「どんなキャラクター」で「何を対象に」この道を歩いてゆくのでしょうか?

「キャラクターは……うーん、むずかしいけど、やっぱり『迷い多き現代男』かな(笑)。すぐにすねる、ひがむ、嫉妬する、調子に乗りやすい、惚れっぽいとか、特別変人ではなくて普通の人なんだけど、だからと言って感情を押し殺してカタギの道も歩けないという、矛盾に満ちた存在(笑)。
今、日経ビジネスオンラインで『ボク様未婚男のリアル』っていう、僕と同じように、ロスジェネ世代で結婚とかする気が全然ない同年代の男性と飲みながらうじうじと語る、という連載をやっていて、これがほんと楽しいんですよ。特にキャラを作ったりするわけではなく自然体で、自分の面白いと思うことやっていけたらいいなぁ」

となると、大宮さんが扱ってゆくテーマはというと……。

「うーん、やっぱり『モテ』かな(笑)。自分が一番興味があることだし(笑)。
と言っても、モテのノウハウやテクニックを論じるんではなくて、何を持ってモテと言えるのとか、そもそも男ってのはなんでこんなにもモテたいのかとか、そういう部分に興味があるんです。
時代によってモテの価値観も違うし、性欲とモテとは違うのかとか、究極のモテとは何かとか、そうやって真面目に考えていけば、それは『いかによく生きるか』につながると思うんです。もっと俗っぽい『何人斬り』みたいなのもあれば、一人の女の人にとことん愛されるモテもあるし、自分がとことん愛するという『モテ』のカタチもあるし。

モテとは何か、ということについて、技術の話ではなく、哲学として論じてゆきたいですね。あ、これ、『モテつがく(モテ哲学) 』かな?」

……。
今日はありがとうございました。

インタビューの冒頭で、大宮さんから今一番たいせつなのは『自分自身』だと聞いたとき、これが30代未婚男性のリアルなのだと、少しさみしくなりました。
やっぱり、家族や恋人よりも、自分に対する比重が大きいんだな、と。
しかし、いくつになっても、結婚していてもしていなくても、男性でも女性でも、常に今の自分を客観的に自己分析し、セルフプロデュースし続けることは、とてもたいせつなことなのです。
なぜなら、自分はいつまでたっても自分なのですから。
この『自分自身』を武器に、私たちはこの世界を、生きてゆくのです。

 




<了>


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text by Hong Ae Sun
 
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