トレイシィ・チャベス Tracy Chavez
<profile>
1986年生まれ。ペルー出身。1991年に家族とともに来日。2009年、関西大学経済学部を卒業し、今春より上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科に入学予定。ペルーの農村地域における持続可能な経済発展メカニズムについて研究中。





4月から上智大学の大学院で研究することになっているトレイシィさん。2009年8月に上京し、現在は4月からの研究に向けて準備を進めています。
「上智大学は、私がずっと研究したいと思っていたラテンアメリカの分野にすごく強いんです。ラテンアメリカ専門の先生もすごく多いし、何より私が所属することになったゼミの先生は、私がやりたいと思っていた研究テーマにぴったり!の先生で、絶対にここで研究したい!と思って。上智大学はカリキュラムの面でも、『総合的な視野を持って地域を研究する』という教育方針も、そして何よりキリスト教の精神に基づいた教育理念をもっている、という点でも、私にとっては理想的な大学でした。受験はすごく大変でしたが(笑)」
トレイシィさんの研究テーマは、「ペルーの農村地域における持続可能な経済発展メカニズム」。とても難しそうな問題ですが……。
「そうですね。難しいです(笑)。ペルーって、農作物がすごくたくさんあるんです。マカとか、キヌアとか、カムカムとか、美味しくて身体にもいい農作物がすごく豊富なのですが、うまく市場に流通ができていないんです。
それを、3年前にペルーに帰ったときに思って、それってなんでなんだろうか、というのがそもそもの問題意識のはじまりでした。例えば、同じ農作物がとれるボリビアだったら日本に輸出しているけれど、ペルーは輸出していなかったり。やっぱり市場流通メカニズムが成り立っていないのか、まだ確立していないのか、なんでなんだろう、と。
それを大学院で研究して、実際に日本にキヌアとかカムカムとか、いいもの輸出できるようになれば、ペルーと日本両方に利益になるのではないかって、それを目指して今、先生と悪戦苦闘しているところなんです」
トレイシィさんに人生を左右する問題提起のきっかけをくれたのは、トレイシィさんの生まれ故郷・フニン県でした。
「ペルーに帰ったら必ず、フニン県に寄ることにしているんです。人に会ったり、あちこち歩いたり。今では治安もよくなって、観光名所になっていて。すごくキレイなところなんです。3年前に帰ったとき、農村を歩いていたら、リマでは1キロいくらで売っている農作物が、その何分の一の値段で売られているどころか、『あげるよ』ぐらいの感じで放っておかれてるのを見たんです。腐るくらいならあげるよ、みたいな。これはすごくもったいないことだ!と思って。それがきっかけでした」
フェアな関係を築きながら相互に利益を与える流通システムの構築は、全世界で望まれていることです。
「『持続可能』という部分を大事にしたいと思っています。経済学でいう『持続可能』というのは、経済的な部分で今後も続くようにという部分と、治安や環境を守ることも含めて意味するので、ペルーと日本、両方にとっていい未来につながるためにはどうすればいいのか、2年間しっかり研究したいと思います」
若き研究者であるトレイシィさんの未来に幸あれ!



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text by Hong Ae Sun


 
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