播摩早苗 Harima Sanae
<profile>
株式会社フレックスコミュニケーション代表。1958年北海道札幌市生まれ。HBC北海道放送にアナウンサーとして勤務後、独立。心理学、自己表現、コーチングなどを学び、2001年フレックスコミュニケーション設立。自らも講師として大手企業の管理職研修、プレゼン研修のほか、女性のためのコミュニケーションセミナー、営業マンのCS研修などを中心に活動する。ラジオ番組出演、経営者・管理職対象の公演などを通じ、コーチングの普及活動も活発に行っている。『目からウロコのコーチング』『モテる男の会話術』(PHP研究所)など著書多数。2010年5月に出版した『リーダーはじめてものがたり』が、読み進めるうちにリーダーとして成長できる目からウロコのビジネス小説として、ビジネスパーソンを中心に話題を集めている。



播摩さんの話題の新刊
『リーダーはじめてものがたり』
(幻冬舎刊)

登りたい山を見据えながら、とても自然体で『今の自分』を楽しんでいる播摩さん。「どの山に登りたいか」というイメージは、以前からずっと持っていらしたのでしょうか。
「以前とは違う山ですね。昔、この仕事を始めたときは、『会社をこういう風にしたい』という山でした。今ももちろんありますが、それは次のレイヤーになり、もうひとつ上のレイヤーに『こういう心の状態でいたい』というのがありますね」
それは、どういう心の状態なのでしょう?
「小さいものでもいいから、『向かっている状態』『わくわくしている状態』が幸せなんです。何かの『幸せな状態』があるのではなくて、作業レベルのときに幸せ感で満たされるので、“心のあり方”の状態が幸せだと知ったから、『こうなりたい』『ああなりたい』という状態に固執しなくなりました」
つまり、何かを達成する成果よりも、その間のプロセスに幸せ感を感じるということでしょうか。
「そう、プロセスというか、その作業レベルでの心の状態がほしいんですよ。多分一生そうですよ(笑)。だから『播摩さんは一生走り続けるだろうねぇ』と言われるんですけど、走り続けてるんじゃないです。走ってる心の状態が好きなんですよ。そういう自分なんだってわかったから、きっとそれが与えられますよね」
もう少し具体的に言うとどういった感じでしょうか。
「例えば『あぁ〜完成したい〜』と思って本を書いていたら、『完成したい』って思って書いてる状態が好きなんですね。『研修したい』って思ったら、研修は最終的に完結で、それに向かって作っていくんですが、その作ってる状態が好きなんですよ。その状態で仲間とあーでもないこうでもないとか、こういう流れで行こうとかここでシミュレーションしてもんでいくその作業が好きなんでしょうね」
ゼロから作って完結するまでの『プロセス』が好き、ということですね。
「そう、それが私の本質です。生きる本質。本質で満たされた状態でいられれば、幸せなんです。人はみんなその『状態』が好きなんだと思いますよ」
私なんぞは、完成したときの達成感のために動いてしまうことが多いのですが……。
「達成感は達成感ですよ。向かっている状態に得られるのは充実感。達成感と充実感とは全く種類が違いますよね。達成感は一瞬の間で消えるものですが、充実感は一生続くものです。充実感がほしくて生きてるわけですから」
それでは最後に、「人」と「流れ」と「勘」を研ぎ澄ますためのポイントはなんでしょうか。
「変化に柔軟でありながら、今できることを心を込めて取り組むことでしょうか。未来は今の積み重ねですから、今をないがしろにしているといい未来は絶対に来ません。わ、なんだか説教くさいこと言ってますね(笑)。
そして、わくわくできる自分を大切にしてもらいたいです。『好きなことを仕事にしない方がいい』という人もいますが、WantとMustが限りなく近いこと以上に楽しい人生はありません。それが『わくわくできる自分』ですね。そこにいろんな経験を通してCanも生まれていけば、WantとMustとCanの重なったところで、わくわくしていろんなことに取り組めると思います。
若い頃は大変なこともありますが、『きっとできる』と楽観的になって、早い行動を心がけてみてください」

***

達成感と充実感……
確かに、『達成感』だけに捉われていた自分がいました。
それはとても中毒性があるくせに一瞬で消えてしまうもの。だから次の『達成感』を求めて結果を急ぐ。それもまた一瞬で消えて、また次。次。次。繰り返すほどに作業への愛着は薄れ、目的がなんであったかもわからなくなり、自分がどこへ向かっているのか、何のために「これ」をやっているのか、わからなくなる……。
「終わりよければ全て良し」を31年間座右の銘としてやってきた私の報いかもしれません。
でも、まだ間に合うはず。
何をしているときに「幸せ感」を感じるのか潜在意識に問いかけながら、歩きなおしてみたいと思います。
その第一歩が、この『econ−mag』の新展開になるかななんて、わくわくともくろみながら……。

<了>

 



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text by Hong Ae Sun


 
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