山本さんが初めて商品開発に取り組んだ仮面ライダーの『ショッカー首領時計』(現在完売)も、『ルフィの麦わら』と同じようにこだわりを細部に詰め込み、ファンたちを魅了するアイテムとなりました。山本さんがこのような商品開発に取り組むようになったきっかけは、一体なんだったのでしょうか。
「もともと全然違う会社でTVCFやミュージッククリップの映像ディレクターをやっていて、そこで仮面ライダーのエンディングテーマ曲のPVも担当させてもらってたんです。それからCDのジャケットデザインのディレクションもやらせてもらってたりしたんですが、ある事情があってその会社を辞めることになって……。その後、今の会社に移ってからも引き続き仮面ライダー関連の仕事がしたいと思って、何ができるか考えてみました。やはり仮面ライダーは自分にとってとても思い入れのある作品なので。僕が携わっていたミュージッククリップなどの業務は、前の会社が引き続きやっていたので、そこは仁義を通して別のことをやろうと思い、グッズ制作の提案をさせてもらったんです」
映像ディレクターがある日突然グッズプランナーとして提案に来たとなると、担当の方も驚かれたのではないでしょうか!?
「そうですね(笑)。東映の担当者の方に『なんで山本さんがグッズなの!?』と言われました(笑)。でも、提案していくうちに『愛情』というか『こだわり』を感じてくれたみたいで、時間はかかりましたが最終的にはご快諾いただきました。僕自身、特撮というジャンル、中でも仮面ライダーという作品が好きですし、『いつまでも愛される作品として応援したい』という気持ちが強いので、それが少しは伝わったのではないかと思います」
さてこの『ショッカー首領時計』も、こだわりポイントが満載。まずデザインは、初代仮面ライダーの敵であるショッカーが潜む秘密基地にあったワシのレリーフをかたどり、かなりの大きさ。存在感あります!
「これ、表面は全部手塗りなんですよ。あえて「昭和の美術セットの感じ」を再現しています。中国の工場で作ったんですが、こだわり箇所が多すぎて、なかなか思うように伝わらずトラブルの連続でした。『なんでそこまでこだわるのか』というやりとりをずっとやっていて……。でも結果的にはイメージどおりのものができたと思います」
こだわりポイントはデザインだけではありません。毎時0分になるとワシの胸のランプが光り、なんと、首領の声を務めた俳優の納谷悟朗さんの声で、「○時だ。行け」といった時報アナウンスが! これは、仮面ライダー世代じゃなくても思わず「イーッ!」って言っちゃいますね!!
「納谷悟朗さんの事務所にかけあったとき、これもまた初回ロットがとても少なかったので、『ギャラは、売れたらこれくらい払えるんですが、売れなかったらこれくらいしかお支払いできません』ってお願いしたんです。そしたら当然、事務所の方に『納谷はその金額ではお仕事できません』と言われてしまいました。当たり前なんですが(笑)。でも、また一生懸命話していたら『山本さん、どうやっても、やりたいでしょ』って言ってくれて(笑)。かなりご無理を言ってしまいましたが、想いが通じた瞬間でした。結果的には予想以上の反響で、納谷さんにもなんとかお支払いすることができてよかったです(笑)」
ちなみに、0時と3時と6時と9時という「カッコイイ針の配置」の時間には、「○時だ。行け」に加えて他にもカッコイイ指令が入るというのだから、相当のこだわりっぷりです。さらにインターネットでの商品購入サイトのデザインは、男前豆腐店などのサイトも手がけている「MONKEYDASH」の太陽氏がデザインしたスペシャルなもの(〜戦闘員どっと混む〜)。そのサイトには、購入者全員が『ショッカーの支部』として登録できる仕掛けや、日本ピクトさん学会会長の内海慶一氏による「特別寄稿」など、ファンの心をこれでもかというくらいくすぐる仕掛けがあふれています。
「太陽さんも内海さんも、『面白そうだからやります』と言ってくれたんです。自分自身も、これで儲けたいとか成り上がりたいとかより、お客さんと同じファンの気持ちで『こういうのが出たらうれしいな、楽しいな』と言う気持ちで昔からずっと作っています。自分がほしいから作りたいし、自分みたいな人はたくさんいると思うので、喜んでくれる顔が浮かぶんですよ。まさにサンタさんの気持ち(笑)」
『ルフィの麦わら』と『ショッカーの首領時計』。ありそうでなかった高い完成度を誇るアイテムの成功を機に、いろんな企業から「アイディアをください」とお声がけいただくことが増えているそうです。
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