山本周史 Yamamoto Chikafumi
<profile>
1969年広島県生まれ。大阪芸術大学映像学科を卒業後、広告代理店を経て映像ディレクターに。現在は株式会社ZUNOコンテンツ開発部プロデューサー、クリエイティブディレクターとして、商品の企画開発や映像制作、祐天寺応援サイト『U10G』の運営などに携わる。





現在、山本さんが商品開発と同じくらい力を入れているのが、『町おこし』のプロジェクトだそうです。
「またこれも、突拍子もないですよね(笑)。今は『U10G』という、東京の祐天寺という町を舞台にしたサイトの運営をやっています。もともとは不動産の企業と一緒に始めたプロジェクトでした。一生懸命サイトを作っていたらすごくいいものができて、運営スタッフも、町の人と仲良くなって、スポンサー契約は終了したんですがこのままサイトを終了したらもったいないな、と思って。それで国の助成金を申請したらもらえることになったので、継続して今も運営しているんです。祐天寺は急行も止まらない小さな町ですが、そこにいる人たちがこの町を好きになってくれる手助けができたらと思います」
『ルフィの麦わら』も、地場産業を盛り上げるという意味では町おこし事業の一助となりますよね。
「そうですね。石田製帽さんは岡山県笠岡市にある、決して大規模ではない麦わら帽子メーカーです。でも本当にいい技術を持っていて、いい仕事をされています。こういう小さな会社や個人経営のお店もうまくいく社会の方が面白くてハッピーじゃないか、と思うんです」
確かに、最近は外食するにもチェーン展開しているお店の方が入りやすい、物を買うにも全国展開している量販店の方が安く買える、などで個人経営のお店を敬遠する人が増えています。
「僕の実家は町の小さな紳士服屋さんでした。あっという間に某A社やU社など大手に押されて(笑)。今はなくなってしまいましたが、父が経営していたそのお店のおかげで、僕は大学まで行かせてもらったんです。だから僕の原点はそこにある。
大企業はそれはそれでいいけど、小さな会社やお店もちゃんと共存できる社会じゃないと面白くないですよね。そういう意味では、今は面白くなくなってきているのかもしれません。でも、これからの時代は腕のある企業、個人が生き残っていく時代だと思います。そんな人たちが面白く仕事できるような手助けができたらいいなと思っています」

26歳から29歳にかけて、お母さんの入院、実家の事業の倒産、そしてお父さんの急逝など、次々に深刻な出来事がふりかかり、会社を辞め、田舎へ帰っていた時期があったそうです。山本さんはその時、一度人生をリセットしたように感じると言います。
「『生きてるうちにやりたいことをやらなきゃ』と思いました。そして、人間関係は『広く浅く付き合う』よりも、本当に信頼できる人と『深く付き合う』ことが重要だとも感じました。お金の関係でできた人脈は、お金がなくなると切れるんですよね。自分が家庭の事情で本当に苦しい時にすっと手をさしのべてくれたのは、利害関係を超えたところにいる人でした」
大人になってから出会う人、特に仕事を通して知り合った人は、どうしても『利害関係』が絡む人です。そんな中で『利害関係を超えた人』と出会うにはどうすればいいのでしょうか……?
「うーん、どこで出会ったとしても、お互い同じ方向を向いて『面白がれる』といいのではないでしょうか。自分も、何かをするときにそれをもとに儲けてやろう、とか、これで有名になろう、というのではなく、『それが好きだからやる』という気持ちを共有できる人とは、利害関係を超えていろんなことを一緒にできるようになると思います」
好きだからやる。とてもシンプルですが、実はすごくむずかしい。だって、どうやっても私たちには『欲』というものがでてしまいますから。
「僕が尊敬している絵本作家の方が先日おっしゃっていたんです。『最近絵本作家になりたい人が多いけど、絵本を純粋に作りたい人が少ないみたいなんだよねぇ』って。絵を描くことや物語を作ることが好きだから、という理由じゃなくて、絵本作家になって儲けたい、有名になりたいから絵本をつくる、という。
この言葉を聞いて納得してしまいました。自分はやっぱり、『それが好きだからやる』を中心に据えてやっていきたいです。こんな仕事をしているから、もう少し欲張ってギラギラした方がいいかもと思うことはあるんですが(笑)」

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text by Hong Ae Sun


 
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