ロスジェネ男子←→女子の往復書簡【24通目】④「仕事の神様」は自分の中に設定するしかありません。


ouhuku_02ロスジェネ男子ライター・大宮冬洋(1976年生まれ)と、

ロスジェネ女子エディター・洪愛舜(1977年生まれ)、
ふたりの「ロスジェネど真ん中世代」が試みる
インターネット往復書簡。
大宮氏が、フリーランスとしての
仕事の進め方について?語ります!

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洪愛舜さま

こんにちは。大宮です。
僕はいま、愛知県蒲郡市の自宅にいます。
妻は朝から会社に行きました(当たり前ですけど)。
朝食後に慌ただしく身支度している妻を尻目に、僕はソファで二度寝です。
「会社勤めじゃない人はいいよね、自由で!」と嫌味を言われましたよ。
いやいや、今から静かに原稿の構成を練ろうと思っていたのだよ、頭の中はすでに仕事がいっぱいで……。
むにゃむにゃと言っている間に妻は出発してしまいました。

実際のところ、ソファで寝ながら仕事なんてできません
机の前に座ってパソコンを起動し、真っ白なままのワード画面に恐怖を感じながら、すぐにネットサーフィンやメールチェックに逃げたがる自分を抑制して、とにもかくにも原稿らしきものを書き進めなくてはいけないのです。

もしくは、断られるのが嫌だなあと思いながら、インタビュー取材のお願いメールや電話に取り組まなければなりません。
仕事って辛いものですね。
だからこそ、何とか終わらせたときの解放感は大きいのだと思います。
達成感とともに「いい仕事ができた!」という勘違い混じりの自己肯定感が高まるときもあります。

今の仕事が自分に向いているのかいないのか。
若い頃は無我夢中だったり野心が強すぎたりしてよくわかりませんでした。

でも、最近は思うのです。
その日の仕事をやり終えたとき、自己満足のようなものを感じるのか否か
「オレ、今日はよくやった。今夜は楽しくお酒を飲んじゃってOK!」
と自分に言ってあげられる瞬間が週に1回でもあるならば、その仕事は自分の天職だと思いこんでいい。
他人からの評価とか報酬の有無とかは二の次ですよ。

それにしても「毎日仕事をする」ことは辛いですよね。
達成感なんて得られない日のほうが多いからです。
僕たちのような自営業には勤務時間や人事評価はないので、「とにかく朝から晩まで粛々と働こう」とか「自己評価はともかく会社からは評価されているので大丈夫」といった逃げ道はありません
他人との約束がなければ今日一日を休みにしても叱られないし、逆に明朝まで働き続けても構いません。
でも、それでは怖すぎます。
人は自分には甘いので、どんどんダメな方向に行ってしまう気がするのです。
「今日はこれだけやったら問題なし」という指針というかペースがほしい。
他人から命じられるのは嫌だけど(そのへんが身勝手なところですね)、神様みたいな存在に今日の課題と時間割を決めてほしい――。

「仕事の神様」は自分の中に設定するしかありません。
自分の性質を知りつくし、厳しいけれど愛情深い神様です。
最近、僕の中の神様は言うのです。

「お前が気力も体力もないマイペースな男だということは私がよく知っている。小心者なので、遊びほうけることもできないだろう。だからこそ、毎日少しずつ仕事せよ。一番苦しい原稿書きは、テープ起こしや構成作りの時間も含めて、1日に3時間やればよろしい。60分を1コマとし、1日3コマをこなせ」

前回のメールで書いた「TODOリスト」の内容は、3コマで終わるぐらいの分量にしています。
なんだか気分が乗らないときは2コマで勘弁してもらいます。
逆に、調子がいいときも4コマで終了です。
僕の場合、それ以上原稿書きをすると、興奮しすぎて夜に寝つけなくなる傾向があるからです。

うーん、働き者とはとても言えない日常ですね……。
「会社人間」は苦手だけど「働き者」が好きな僕としては、劣等感に浸りそうになります。

でも、僕の神様は諭してくれるでしょう。
「無理するな! ポンコツな自分を受け入れよ。コツコツと人生を生き抜け。そうすれば、来世は天才か働き者に生まれ変わらせてやるぞ」

というわけで、本日も3コマ目が無事に終わりました。
なんだかちょっといい気分。

今日は僕が夕食のチキンカレーを作る約束なので、今から農協にジャガイモを買いに行ってきます。
ではまた!

5月6日 愛知県蒲郡市の自宅にて
大宮冬洋
2016/06/01 15:44

★次号25通目は、次のメールは8月3日(水)に更新します★

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<大宮冬洋 プロフィール>

1976年埼玉県所沢市生まれ、東京都東村山市育ち。一橋大学法学部卒。新卒入社のユニクロをわずか1年で退社し、編集プロダクションを経て2002年よりフリーライターに。 高校(武蔵境)・予備校(吉祥寺)・大学(国立)を中央線沿線で過ごし、独立後の通算8年間は中央線臭が最も濃いといわれる西荻窪で一人暮らし。新旧の個人商店が集まる小さな町に居心地の良さを感じるようになる。
2012年、再婚を機に愛知県蒲郡市に移住。現在は「蒲郡の中央線化(もしくは鎌倉化)」を模索している。
月の半分ほどは門前仲町に滞在し、東京原住民カルチャーを体験中。

著書に『30代未婚男』『ダブルキャリア』(ともに共著、NHK出版生活人新書)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵〈ストーリー〉』(ぱる出版) がある。最新刊は『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ぱる出版)。uniqroYahoo!ニュース個人にて、「ポスト中年の主張」を配信中。
他にも、「ニッポン独身くん図鑑」「お見合いおじさんが来た!」(共に『婚活のミカタ』)、「晩婚さんいらっしゃい!」(東洋経済オンライン)、 「『仕事恋愛』の理論と実践」(日経BPネット)などのweb連載のほか、雑誌連載も。
omiya自ら主催するイベント「スナック大宮」を東京・西荻もしくは愛知・蒲郡にて月に1回のペースで不定期開催中。詳しくはこちら

2016年にリニューアルした公式ホームページを毎日更新。
メールマガジン「冬洋漬」も発行中、登録はこちらから。

<洪愛舜 プロフィール>

1977年大阪府堺市生まれ。
立命館大学理工学部卒業後、出版社勤務などを経てフリーランスのライター・編集者に。編集プロダクション「econ(エコン)」主宰。
著書『もやもやガール卒業白書』(MMR)がある。
『econ-mag』編集長。
『目黒駅前新聞』編集長。
4歳児&2歳児を子育て中。
ブログ『目黒より、econがお届けします』を不定期更新。